平衡型6DJ8全段差動プッシュプル・ミニワッター 2Uラックマウント型の製作

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はじめに


上: 今回製作した 、平衡型 6DJ8 全段差動プッシュプル・ミニワッター
中: 比較用の 2U 機材(YAMAHA TX802)
下: 前回製作した、平衡型 6N6P 全段差動プッシュプル・ミニワッター

前回製作した、ぺるけさんの平衡型 6N6P 全段差動プッシュプル・ミニワッターができてから半年ちょっと経ちます。
PCデスクで主に 10M を鳴らしていますが、こいつはいろんな意味で日常生活を楽しくしてくれました。
気を良くして、ヘッドホン専用兼、枕元用ミニワッターを作ろうと思い立ったのが始まりです。

今回は1Wと言わず、もっと小さくても良さそうですが、あまり小さくし過ぎると別用途に使い回す時不便かもしれません。
出力は 6N6P より落ちますが、前から興味のあった 6DJ8 で作ってみることにしました。

平衡型 6N6P 全段差動プッシュプル・ミニワッターとの合体

ぺるけさんのホームページでは、6DJ8 も V1~V3 の三種類発表されていますが不平衡です。
一方、平衡型は 6N6P しかありません。
うちの場合は平衡型の方がありがたいので、この2つを合体して、平衡型 6DJ8 全段差動プッシュプル・ミニワッターに変更します。

動作点は極力変えたくないので、できるだけ元の回路を流用しました。
まず、6DJ8 V2 の 14kΩ版の終段以降をそのまま持ってきて、ヘッドホン端子を平衡、不平衡で追加します。
これで電源電圧が決まるので、B+ 電源は 145V になります。

入力は、前回作った 6N6P の時のセレクタをそのまま持ってきました。
初段は、ぺるけさんの平衡型 6N6P 全段差動プッシュプル・ミニワッター(カスコード版)のものを持ってきます。
当初はロードラインを引き直そうと思っていましたが、本音を言えばできるだけ流用したいところです。

負荷抵抗の 9.1kΩ を変えるとロードラインの傾きが変わってしまうので、これはそのままにします。
ぺるけさんのカスコード版ならドレイン電圧は固定されているので、V+ 電源を触っても差動の
2SK117 には影響しません。
ということで、今回は動作電流、負荷抵抗はそのままで、V+ 電源を変更して流用することにしました。
V+ 電源を変更して終段のバイアスへ合わせます。

欲を言えば、V+ 電源か定電流回路の電流のどちらかが微調整できると尚良いです。
ぺるけさんのものと違い、私の方はラックマウントなので温度的には高くなります。
ラックに突っ込んだ時、温度が上がって動作点が大きく変わる(2SK30ATM の電流が減る)のはよろしくないので、定電流回路は温度補償付きにしたいところです。
ついでに電流が可変できると二度美味しい。

温度補償付き可変定電流回路の検討

J-FET 一発の定電流回路の場合、抵抗を入れれば電流は可変できますが、単品で温度補償となると難しいです。
2SK30ATM は、2SC1815 とかと比べて今後代替に困るのと、換えが効きにくいので
J-FET はやめておきます。
温度補償を付けると、素直にトランジスタで組むのが一番手っ取り早いでしょう。

ぺるけさんも使用している、トランジスタ2個の定電流回路はこれ。
よく見るタイプです。
V+ の変動には弱いですが、簡単で最小動作電圧も低く、安定している印象があります。

昔、トラ技のSPECIALだったか何かで見た定電流回路。
TR1 のVBEの-2mV/℃を、同じ温度特性を持つシリコンダイオードで打ち消したもので、TR1とD1が熱的に結合されていれば、理論上はZD1の温度係数次第で温度に対する安定具合が決まります。普通はここに6.2Vくらいのツェナーダイオードを持ってくるのが定番ですが、最低動作電圧が上がってしまうので、今回は使いにくいです。

ADCとかに使用する、低電圧のリファレンスICなら温度補償されてるよな、と探してみたところ良いものがありました。

ナショセミ(TI)の LM285-1.2 という基準ダイオードです。TO-92パッケージで使いやすく、普通のツェナーダイオード感覚で使うことができます。データシートの謳い文句と等価回路的には、トランジスタ(バンドギャップ・リファレンス)と抵抗のみで構成されており、ローノイズかつ長期安定性に優れているそうです。
RSコンポーネンツで77円なので、それほど高くもないのもナイスです。5個単位で送料もかかるので安く買えませんが、モノ自体は安価な部品です。

私はナショセミの LM285-1.2 を使用しましたが、オンセミとかの安いセカンドソースも使えます。末尾の1.2がないと、無調整で1.2Vにならないので注意してください。
変わり種としては、アナデバの AD589 (キャンタイプ)とかも同じように使えますが高価です。

末尾に1-2のサフィックスが付くタイプは 1.235V(typ.) で、温度補償されているので今回の用途にぴったりです。
データシートによると、逆ブレークダウン電圧で100%テストされてるようです。

今回は2系統の定電流回路が必要です。トランジスタの温度係数はシリコンダイオードで打ち消していましたが、それならカレントミラーでコピーしてしまえば良いと思います。
カレントミラーのコピー元、ベース-コレクタを接続したものはダイオードと等価なので、シリコンダイオードの代わりにカレントミラーを付けると、温度補償はそのままに電流をコピーできます。多分。

やってみたところ、行けそうです。

※PCのカバーが空いた横でやってますが、危険なので良い子は真似しないでください。

ちなみに、この過程で速くて高確度のテスタが欲しくなり、日置の DT4282 を購入しました。高価ですが、お勧め!

定数を調整中の一こま。
試作とはいえ、いくらなんでも芋だらけで取り付けも乱雑で酷いので、正直真似するべきではありません。


今回は 3.66mAが欲しいので、定数をやりくりしてこのように決定しました。VR1により、定電流値を可変できます。
LED等、電流が大きいかアバウトで良い場合、普通はベース電流を無視します。
精密な調整を要する場合はベース電流の影響が無視できなくなるので、直接負荷側(I1、I2の先)での確認が必要です。

基準ダイオードや電源電圧を変更した場合、R1で動作電流の変更が必要です。

VR1がセンターの時の各部の動作値はこちら。
細かい数値が入っていますが、結構アバウトに入れたので、流用する場合はブレッドボードか何かで確認してください。
ツェナーダイオードとTR1のVBEで 1.89Vが決まります。1.89VからTR3(ダイオード)の電圧降下を減じて、残りを抵抗で調整します。

VR1には100Ωの多回転ポテンショメータを使いますので、大体 3.16mA~4.31mA(3.65mA+0.7mA,-0.5mA)の範囲で調整できます。
回路の都合上、ポテンショメータを絞り切った時に電流が最大になるので、結線を注意しないと時計回りで最大になりません。

部品

今回の要の真空管。
ミニワッターだし、ヒーター電流からいくと 6922 あたりの方が合ってそうな気もしますが、出物があったのでナショナルの6DJ8を入手しました。
見ての通り中古球ですが、チェック済みで1000円です。

わりと使っているようですが、多分大丈夫だと思います。
足の掃除さえすれば使えそうです。
本体は印刷が消えそうなので、そのままにしておきました。

トランス類は春日無線変成器で購入。

ポテンショメータは、ここぞという時に使っている東京コスモス製の RJC097P シリーズを使用します。
6N6P のときもこれを使用しています。
試作とか適当な用途(上で出ている定電流のテストとか)には、専ら秋月に置いてある
Bourns 3006P(縦は3296W)ですが、たまに感触が悪かったり回転が軽いのがあって少々不安があります。東京コスモスのこれはコンパチ品ですが、日本製ですし、作りが良いので気に入っています。秋月の Bourns 3006P の3.5~4倍弱の値段ですが、それでも1個180円くらいです。

通販だと共立エレショップとか、マルツにあります。共立エレショップのが安いです。

ロータリースイッチ、ボリューム、レセプタクル類は前と同じです。CRは手持ちのものを使用し、2SK117 はぺるけさんの頒布を受けました。

製作

アンプは、ぺるけさんの平衡型6N6P全段差動プッシュプル・ミニワッターの回路ですが、このラグ板の配線はかなり練られていて美しいので極力変えたくありません。
幸いにも左側が余っていたので、ここに定電流回路を無理矢理突っ込むことにしました。


上段には、調整用のポテンショメータ、基準ダイオードとトランジスタ3個を配置しました。
ちょうどすぐ横にV+電源も来ているので、これを拝借するのに調度良かったです。右端の10kΩは、18kΩの誤りです。
ここの配置、特に中央下の2つのトランジスタは、ECBではなくEBC配列の方が楽なような気もしますが、下段はECB配列でないと厳しいので、慣れ親しんだ 2SC1815-Y を使います。


下段。見ての通り3列しか空いていないので、ECB配列でないと突っ込みにくいです。
ここから定電流用の配線を引き出して、初段の 2SK30ATM の跡地に飛ばしました。

電源です。ぺるけさんの6N6Pパワーアップ版と、6DJ8の電源をベースに起こしました。今回は20列のラグ板を使います。
今回の 6DJ8 を使用したモニワッターですが、ヘッドホンアンプとして使うことを前提にしています。
念のため、ヒーターは直流点火にしました。ぺるけさんの 6DJ8 V3 では交流点火になっているのと、前回 6N6P で作った時に特に問題も出なかったので、直流点火がどこまで効くか不明ですが。
(実際には、作った時 V2 までしか出ていませんでしたが)
右端のバッテンは、組立途中で変更したのでこれではありません。


V+ 電源は、7.7V のツェナー2個、16V のツェナー1個で、約31.4V にしました。

7.7V: HZ7-C3
16V: HZ16-2

ヒーター電源用のブリッジ整流は、31DQ06 だと足が太すぎてラグ板に2本入りません。
ここはブリッジの方が楽ですので、ブリッジにしたいところです。
秋月のホームページでブリッジダイオードを探したら、丁度良さそうなショットキーブリッジがありました・・・が、この外観は買った記憶があります。整理中の部品箱を発掘したら出てきたので、作ってる途中でショットキーブリッジに変更しました。

新電元の D15XBS6 というもので、秋月で200円です。結構高価にも見えますが、60V 15A のゴッツイ定格からいくと破格ではあります。
たまたま店頭で見つけて、お、ショットキーブリッジだ、定格でかいな、ヒートシンクにも付くぞ、新電元だしこれは買い!とか買った記憶があります。
リードピッチもラグ板とほぼ同じで、足もそもまま入ります。ちょっともったいない感もありますが、今回の用途にぴったりです。

ということで、ヒーター電源はこういう感じです。


ケースは、前回平衡型6N6P全段差動プッシュプル・ミニワッターでラックマウントしたものを流用します。
前回、フロントパネルとかサイドパネルは全部2セット用意したので、そのへんは追加はありません。
電源が20列のラグ板になるので、底板のみ作り直しました。
ネジ数の他、ちょっとソケットに近かったため、フロントパネル側にシフトしました。

出来上がった底板がこれ。箱の内側から見たところです。
加工は、前と同じ日本プレート精工です。

ソケット周りを配線していきます。

このあたりは前より低く取り付けています。

トランスをと真空管を載せるとこうなります。

ここまで来たら、底板と合体すると作業が捗ります。

電源基板を取り付け。
センターのみ絶縁スペーサ、ポリカナットです。

並行してフロントパネルも準備します。
これはチャンネル状のダミーパネルです。

裏側は、A5052P 無垢の板が取り付けてあります。

完成するとこうなります。

ダミーパネルにより、ボリュームやセレクタはシャーシアースに落ちるしかけです。ケースは6面ともばらばらになる構成ですが、ネジを介して全パネルに導通があります。

見た目だけのためにフロントパネルが3枚構成なので、真似することは全くお勧めできませんが、スイッチやツマミ類が落とし込みになります。

ヘッドホン用のキャノンレセプタクルとステレオジャックは、ほぼ面一になるようになっています。また、ステレオジャックのワッシャと六角ナットが表に出ません。

ダミーパネルの厚さは、ステレオジャックとワッシャ、六角ナットを現物から採寸して、ステレオジャックが大体面一となるよう決めました。ステレオジャックが浮いてしまうと困るので、正確には約0.5mm飛び出しています。交差を吸収する場所がないので、引っ込んでしまった場合はワッシャ(0.5mm)を外すつもりでしたが、幸い想定通りになりました。

4連ボリュームは、例によってシャフト切断が必要です。

養生しておき、10mmカットします。

切断したら、先端をヤスリで綺麗にして、適当にC面取りします。

切子を掃除して、養生を取ればご覧のとおりに綺麗になります。

ヘッドホン端子まわりを取付け。

ヘッドホンジャックまわりの配線は、6N6P のときと同じです。

抵抗を取り付けたところ。

LEDは、6N6P から引き続きスタンレーの PG3889S です。
ぺるけさんのヘッドホンアンプで知ったのですが、このLEDはとても良いですね。

円筒形でつや消しなのでデザインも良いし、光も柔らかく拡散してくれるので素晴らしいです。
今まで秋月の袋売りのものとかを使っていましたが、非常に気に入ったのでうちでも常備しようかと思います。

スイッチとLEDまわりの配線完了。

配線のツイストが手間で、ツイストしすぎて指が痛くなるのは良くあることです。
今回は全自動ツイストマシンで楽をしました。良い子は真似しないでください。

全自動ツイストマシンで作ると、こんなに綺麗に!

入力セレクタまわり。
前回は普通の配線を使用したため、束ねるのに苦労したところです。
数年前、トモカだったかで買ったシールド線が余っていたので使用しました。ベルデンの 1503A とかいうケーブルで、以前変換コネクタを作る時、Neutrik のL字型ステレオミニに使うために φ3.5mm くらいの2芯シールドケーブルを探して見つけたものです。
4E6S とか 2534 より高い150円/m くらいで高いですが、スパイラルシールドなので使いやすいです。
ただ、変換コネクタには重宝しますが、硬く跳ね返りがあるので機器内配線にはあまりおすすめしません。

ここまで来ると、ようやくアンプらしい姿になります。

動作チェック(一回目)

組立して動作チェックをしたところ、V- 電源が2V弱くらいしかありませんでした。
定電流回路がうまく効かないとマズいので、すぐ電源を落とし、とりあえずリターン電流から V- 電圧を作っている抵抗を 150Ωくらいに増やして通電しました。
どこかで計算を間違えたのか・・・

32V 弱あるはずの V+ 電源が 21.5V しかありません。

電源投入直後、3秒くらいかけて32Vまで上がりますが、その後3秒ほどで電圧が下がります。

16V のツェナーダイオードが機能していないことがわかりました。
ツェナー電圧が落ちるということは多分、各部が立ち上がって電流を吸い出したところ、ツェナー電流が減ってしまったようです。

グリッド電圧と V- 電源の様子。
V- 電源が動作するまでの間、電源投入直後のグリッド電圧が跳ねています。
初段の負荷抵抗は9.1kΩで電圧が24Vなので、5.3mAくらい流れてしまっているようです。

継ぎ接ぎする時、ざっと計算したはずですが間違えていたようです。
B+ 電源からのドロップ抵抗を 7kΩくらいになるよう追加して、ツェナー電流が確保されるようにしました。

どうやら成功したようです。

リターン電流が正常になったことで、150Ωだと V- 電源が大きすぎになったので、-4V
くらいになるよう元々の82Ωに戻します。
(極性が違うのは測定時によるものです)

良さそうだったので、B+ からのドロップ抵抗を 13kΩ//15kΩ で、6.96kΩに変更しました。

動作チェック(二回目)

V- 電源は -4.16V となりました。

電源投入後、5秒くらいは V-が低く基準ダイオード電圧に満たないため、定電流回路が正常に動作していませんが、グリッド電圧が過大に跳ねることがなくなりました。
定電流回路の動作遅れは、後段が完全に立ち上がっておらず、リターン電流が流れていないので多分OKです。
先程のB+、V-電圧の波形からいくと、冷めている状態からの立ち上がりには8秒くらいかかるようです。

こちらは電源連続投入時のもの。問題ありません。

V+ 電源は想定通りの電圧になりました。

B+ 電源も146Vで想定通りです。

ヒーター電圧は、6.6Vと高めでした。
ショットキーダイオードの変更でVFが低くなったようです。
7DJ8 に差し替えてしまうのも芸がないので、ドロップ用の抵抗を1Ωから1.5Ωに増やし、6.3Vになるようにしました。

温まったところで初段の調整完了。

グリッド電圧は、ほぼ設計値の15.5V、カソード抵抗の両端は18.6V だったので、バイアスは -3.1V です。
ぺるけさんのロードラインだと -2.7V で、だいたいばらつきの範囲くらいかと思います。
ちなみに、相方の球は -2.6V でした。

初段の負荷抵抗は9.1kΩなので、初段はだいたい 3.4mA くらい流れているようです。
そっちはまだ手をつけていませんが、しばらく使って慣らしてから微調整予定です。

完成

中身の様子。

後ろから。

パネル周辺の電線がやたら余ってるのは、フロント、リアのみ倒してメンテナンスできるようにするためです。


アンプ部分とセレクタ周辺。フロントパネルを外さなくても何とか調整できるくらいになりました。

背面。
キャノン2系統、RCA 1系統の3入力あります。

キャノンのうち、1系統はオスメス用意して、どっちの仕様が来てもOKになっています。スルーにも使えます。

アワーメータが天地逆転してますが、実はトランスが載っているベース板を180度間違えてしまい、トランスに端子が近くなったため天地入れ替えてお茶を濁しました。
6N6P はベース板が設計通りの向きになっているので、干渉はありません。不覚でした。

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